となりの経営工学科

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早稲田理工の2018年度入試を徹底分析!~経シス入試に異常事態!?~

タイトルに「早稲田理工の」と書いてありますが、経営システム工学科が主題です。

 

2018年度入試は異常でした。経営システム工学科は、例年に比べ明らかに難化しています。その理由をこれから説明します。

※ここに記述されている内容は個人的見解であり、 大学を代表する物ではありません。

 

この記事は以前分析した内容に2018年度入試結果を加えたものになります。併せてこちらもどうぞ。

industrialengineering.hatenablog.com

 

 

はじめに

2018年入試はどこの大学も合格者数を減らし、結果的にかなり難化したようです。これはは私学助成不交付基準の厳格化に起因します。

こちらのサイトが分かり易く説明しています。 私立大学の定員管理厳格化について、より詳しい情報を知りたい人はこちらから別サイトへどうぞ。)

簡単に言うと、「定員の○○倍以上の合格者を出した私立大学は、国からの助成金を少なくするよ」という事です。大学は助成金を満額受け取るために合格者数を絞り、故に今年の私大入試が難化したのでしょう。

経シス入試の異常事態…それは定員管理が関係しているのでしょうか!?

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基本情報

データは早稲田大学が公表している過去6年分を使います。

(出典:近年の入試結果 – 早稲田大学 入学センター

 

経営システム工学科全体の定員は120名と決まっています。そのうち約50名ほどが内部推薦(付属・系属校からの進学)と指定校推薦などで決まります。

一般入試の定員は70名となっており、過去6年で変わっていません。

 

志願者・受験者・合格者・倍率など

下の表は2013~2018年度の経営システム工学科について、入試状況をまとめたものになります(黄色い部分が最新のものになります)。

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 !?

2018年の合格者数と実質倍率の数字がおかしなことになってますね……前回の分析では志願者数・受験者数の推移などに着目していましたが、 この表では合格者数と実質倍率に注目せざるを得ません。合格者数が例年の半分近くまでに減少し、実質倍率が2倍近くになっています。

 

まさしく激難化。受験生からしたらたまったもんじゃないですね。

 

受験者数

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志願者数・受験者数ともに昨年より1割ほど上昇しています。が、この程度の増加は不思議じゃありません。ちょっと人気になったくらいかな~、ぐらいの感想です。

 

合格者数

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さて、気になる合格者数です。2013~2017年の間では「低い年は170名、多い年は203名」というような推移でした。70名の定員に対して2~3倍です。「結構な数の合格を出しているんだな~」というような感想でした。

しかし今年はどうでしょう。上のグラフより、明らかに厳しい入試だったことが分かります。定員は変わってないのですから。タイトルに「入試に異常事態」とありますがこれは問題が難化したのではなく、合格者数が激減したことを表しています。

 

外れ値の検定にスミノルフ・グラブス(Smirnov‐Grubbs)検定というものがあります(参考:外れ値 - Wikipedia)。

これによると今年の合格者数は有意水準1%で異常だということが分かります(厳密には有意点)。つまり、この状況が偶然生じたとは考えにくいという結論になります(回りくどい言い方ですが統計学的にはこれが正しい...はず)。

 

実質倍率

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実質倍率(受験者数 ÷ 合格者数)の値も異常です。例年の約2倍に上昇しています。見てくださいこの角度。昨年までが可愛く見えます。やはり今年の入試は受験生泣かせだったようです。

 

補欠合格者数

次の表は補欠合格についてまとめたものになります。

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昨年までは補欠合格を当てにしない方が良さそうでしたが、今年は違いますね。補欠合格者全員に入学許可が出ています(実際に入学したかは不明です)。

 

実質倍率の比較

分析

実質倍率について横並びで比較すると、学科別の人気度が分かります。実質倍率は受験者数を合格者数で割りますから、この数値が高いほど入学が困難という事になりますね。

これが大学公表のデータを集計したものです。

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あれ、経シス高くない!?

全学科について折れ線グラフで見てみましょう。

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少し見にくいですが、経シスが他学科に比べて頭一つ抜け出ていることが分かります。気になるのは他学科の倍率にあまり変動がないこと。

 

創造理工学部内で見るとこんな感じ。建築学科を始め、経シス以外は軒並み低下しています。経シスを穴場学科と呼ぶのはもう無理かもしれませんね。

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考察

「経営システム工学科の実質倍率だけが急上昇した原因」を明らかにしようと思います(学系Ⅲは除きます)。考察に使用する、2013~2018年の基幹・創造・先進の各学科の入試結果から判明した重要な前提情報は下記の通りです。読み飛ばして、結論だけ見てもOK。

  1. 募集定員の変化はほぼない(今年から基幹の学系Ⅰだけが5人増えた)
  2. 2013年→2017年では、14学科中9学科で受験者数が減少
    全体で約300人・2.4%、経シスは約30人・4%
  3. 2017年→2018年では、14学科中8学科で受験者数が減少
    全体で約500人・4%、経シスは約80人・10%
  4. 2013年→2017年では、経シス以外の13学科で合格者数が減少
    全体で約650人・19%、経シスは約13人・7%
  5. 2017年→2018年では、14学科中8学科で合格者数が増加
    全体で約50人・2%、経シスは約110人・54%

 

まず常識的に、受験者数の増減は合格者数の増減と比例すると考えられます。なぜなら、受験生全体に占める「早稲田を蹴って他大に進学する受験生の割合」も増えるからです。受験者数の増減と合格者数の増減を一致させないと定員割れor定員超過のリスクが高まります。

前提1より、募集定員の増減による受験者・合格者数の変動はないと言えるでしょう。

前提2,3より、5年前と比較して、早稲田理工の受験生自体が減少しており、その傾向は昨年から今年にかけて特に強くなっています。一方で経シス受験生は、昨年→今年は全体と反対の動きをとっています。

前提4より、この5年間で、経シス以外の全学科は平均して約17%も合格者を減らしています。それに対して経シスは7%も増やしています。

前提5より、早稲田理工としては、昨年から今年にかけて合格者数を増やした学科の方が多いことが分かります。全体の減少は経シス合格者の大幅縮小によるものです。 

 

以上を踏まえて推測される2018年に経シスの実質倍率だけ急上昇した理由は、

『他学科は合格者数を段階的に絞ってきたが、経シスは今年までそれを行ってこなかった。しかし、受験者数が増えた今年の入試で、他学科に追従するような形で合格者数をいきなり減らしたから。』

 ではないでしょうか。

 

私的にはこの結論にあまり納得できていません。

という事で追加資料を。

こちらの表を見てください。これは、「募集定員に対し何倍の合格者を出したか」の数値になります(2倍以下の数値が赤字です)。 

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全14学科、過去6年の中で、2018年の経シスが最も低い数値となっています。2018年のほぼ全ての学科で6年前より低い値となっていますが、こちらでも経シスの変化は際立っています。

一般的に、この数値が高いほど「受験生に蹴られる可能性が高い」と読み取れるはずです。

逆に、これらの数値が低いほど「他大と比べて、その学科を第一志望とする受験者(合格者)が多い」と言えるでしょう。

 

例えば、右から二番目の生命医科は、早稲田大学の中で医学部的な存在となっています(早稲田には医学部がありません)。こちらを受験する学生には医学部志望の受験生も多くいますが、彼らは生命医科と医学部、両方合格した場合は他大の医学部に進学することになります。なので、募集定員を確保するためには多くの合格を出す必要がありそうです(それでも合格最低点は高いので驚きです)。

早稲田の建築学科は他大の建築学科と比較しても高い人気を誇るので、安定して低い数値が出ていますね。

 

ということは、経シスのこの数値は「他大の経営工学科と比較して、早稲田・経営システム工学科の人気が高まっている」ことを反映しているのでしょう(もしこれが本当だとしたら、在学生として嬉しい限りです!)。

上記の考察と合わせて、このような要因が絡んだことが合格者激減・実質倍率急上昇につながったのだと考えられます。

 

以上で考察を終わりますが、大事な事を忘れていませんか?

そうです、「定員管理の厳格化」です!助成金が減らされるあのお達しです。

理工学部だけの数字を見ると、どこも守れてないですね。というか守る気すらないような…まぁ、無理な話なんでしょう。

 

合格最低点の比較

最後に合格最低点での比較です。

早稲田大学の入試科目について簡単におさらいしておきます。

  • 3教科4科目受験(数学:120点、英語:120点、理科2科目:60点×2)
  • 3つの理工学部で問題は共通
  • 試験はすべて同日に行われるので1学科しか受験できない
  • 建築学科はお絵かきの試験(40点分)がある
  • 物理・化学での受験が基本(一部学科では化学・生物も可能)

こんな感じです。建築学科は今回のまとめから除外しています。

なので合計13学科について、360点満点で合格最低点を比較します。以下がその表。

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以下が過去5年の推移。

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合格最低点の高い順に並べると、経シスは昨年の14位(最下位)から第6位まで上昇しています。合格最低点も215点と過去最高水準です。これも経シス難化の一員ですね。

 

全体的に合格最低点が上昇しています。問題が易化しているのか、受験生のレベルが上がっているのか定かではありませんが、早稲田理工全体として厳しい受験であったことが改めてわかります。1問の凡ミスが致命傷になりかねません。

 

この変化は何を表すのでしょうか。

早稲田の人気復興?

問題のレベルが下がった?(また某予備校講師に「MARCHの仲間入り」と言われてしまうのでしょうか…)

 

まとめ

今回はがっつり入試状況を分析してみました。経シス入試が難化した背景には、定員管理の厳格化以外の要素も強そうです。

 

受験生の皆さんは受験勉強頑張ってください。大学生の皆さんは夏を謳歌してください。

 

今回はこの辺でお終いに!それではまた次回!